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あの山へ……

 山……と云えば虫や蛇や害獣がたんまりといるので,実際に一歩たりとも足を踏み入れたくは無いのだが,しかし,行ってみたい山がある.果たして,どんな山かと云うと,よくある奇談怪談の類で入ったら出てこれないと噂される山だとか,あるいはそういう噂のあるトンネルのある山である.つまり,そんな山は現実には存在していない……たぶん.

 しかし,絶対に存在しないかと云うと,日本に一つや二つはあるかもしれない.これだけ,現代・昔話問わず奇談が語り継がれるこの国に,一つ二つと云わずいくつかはそんな山があっても良いかもしれない.実際,かつては人によって踏破されていても,今となっては住人も離れ,再度,未踏の地となってしまったなんて場所,世にごまんと存在していることだろう.

 かつて,奇談に関するフィールドワークが仕事になると分かり,そういう調査を生業にしている……という状況を夢枕に見たことがある.思えば,それだけでは到底金になるはずがないのだが.たぶんあれはそう……忌録の解析のしすぎで頭がおかしくなっていたのだろう.